
UBSインベストメント・バンク
新興市場/中国担当シニアエコノミスト
マネージング・ディレクター
ジョナサン アンダーソン氏
(インタビュー実施:2008年1月)
[プロフィール] 2003 年、UBS に入社。UBSインベストメント・バンク新興市場/中国担当シニアエコノミスト。国際通貨基金(IMF)に8 年間従事。同中国代表、ならびにロシア代表を各々3 年、計6 年に亘り歴任。2003年から2007年にかけて、UBSアジア担当チーフエコノミストを務める。2007年、アジアマネー誌の調査において、アジア担当エコノミスト部門で第1 位に選ばれる。中国語ならびにロシア語に堪能。ハーバード大学にて、経済学修士ならびに博士論文提出資格を取得。
UBSインベストメント・バンクの新興市場/中国担当エコノミストであるジョナサン・アンダーソンが2008年1月30日、「2008年中国経済・金融市場展望」と題するプレス・ブリーフィングを行いました。内容は「中国の8つの噂」について。その要点を紹介します。
現在の中国は、経済が強烈に過熱し、マクロ的にかなりの金融引き締めが必要なのでしょうか。
2007年のGDP成長率は11.5%でした。構造的に持続可能な成長率は9~9.5%とされていますから、たしかに高過ぎる水準といえるでしょう。ただし、金融引き締めが必要かどうかは、その成長の要因を見極めることが重要です。
そこで国内の消費と投資を見てみると、以下のグラフのように2007年の成長率は9%程度。しかも、ここ4年は下降しています。

では、残りの成長はどこからきているかというと、ネットエクスポート(純輸出力)、要するに貿易黒字です。つまり、問題は需要の過熱ではなく、供給が過熱しているということ。生産が多過ぎるので、過剰な分を海外に輸出しているというわけです。解決策を考えるにしても、需要の過熱と過剰な供給ではまったく別物ですから、ここをはっきり区別することが大切です。
もし国内需要が過熱しているのであれば、金融の引き締めが必要。しかし、供給が過剰であるなら産業の統廃合を図ることが必要なのです。
たしかに中国のインフレ圧力は非常に強く、消費者物価はこの10年くらいで一番高い伸び率となっています。しかし、食品を除いたコアCPIは、以下のチャート(上)のように1~1.1%でほとんど伸びていません。では何が伸びているかというと、肉と卵です(チャート下)。つまり、インフレの源泉になっているのは食品の中でもこの2種類なのです。

これらが高騰している理由はいたってシンプル。ずばり、供給不足のせいです。現状、ポークやチキンはウィルスの問題で在庫が減っています。しかし、供給が上がっていけば、2カ月後か4カ月後かは分かりませんが、インフレ圧力は低下するでしょう。
長期的なインフレ見通しを考えると、構造的に上昇する要因はあります。例えば、労働法の改正によって賃金も上昇するでしょうし、食品価格も上がっていくでしょう。しかし、現状のCPIの上昇は一時的なもので、半年もすれば、インフレ率は3~3.5%程度に戻ると見ています。
融資の伸び率を見ると、2002年から2003年にかけて11%から25%に増えましたが、これはいわゆるバブルでした。その結果、政府は厳しい金融引き締めを実施し、その後2年間は経済も信用もかなり縮小しています。ただ、信用は昨年10月からまた上昇し始め、18%という伸び率になっています。これはバブル前の15%を超えているため、再び引き締めに入っています(チャート)。

では今後の展望はというと、2008年1月の段階で16%を下回っていますが、3月になると15%を切ると見ています。
噂その1で述べたように、現在中国では消費が決して過熱しているわけではないことから、第2四半期になるとインフレ圧力も鈍化してくるはずです。したがって現在、政府は引き締め政策に入っていますが、3~4カ月後には緩和方向に向かい、最終的には中立の政策をとってくると思います。
したがって、GDPは昨年の11%から今年は10%程度に下がると予測されます。それは、世界経済の鈍化によって貿易収支の数字が反転してくるからです。しかし、内需は安定しているため、世界で最も経済成長の高い国としてとどまる可能性は高いといえるでしょう。
以下のグラフが示すとおり、中国の輸出セクターのGDPに占める割合は10%を切っています。それは、アジアのもっと小さい経済国の3分の1、4分の1という少なさです。

実は、今回のようにアジア各国の輸出が鈍化するのは初めてではありません。7年ほどくらい前にも輸出が主導したリセッションがあり、すべてのアジアの国で輸出の伸び率が35~40ポイント下がった時期がありました。2001年には、より小さな経済国である香港、マレーシア、シンガポールなどが大打撃を受けました。にもかかわらず、中国、インド、インドネシアといった大きな経済国では、国内経済がしっかりしているため、それほどひどい景気後退とはならなかったのです。
結論としては、中国は輸出主導型の経済ではなく、内需主導型の経済なので、「米国がクシャミをすると中国は風邪をひく」ようなことはないと考えています。
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